広島の声に耳を傾けて

米留学生が大統領へ手紙

松原とともに再度原爆の子の像を訪れたホロウィッツさん(右から2番目)たち

ホロウィッツさんたちは、原爆の子の像に折り鶴をささげた

同志社大留学センター主催のツアーでホロウィッツさんは他の留学生40人とともに広島を訪れ、松原の被爆体験を聞いた

「大統領、広島の声に耳を傾けて」。ブッシュ大統領の来日にあわせ、京都市の同志社大で学ぶ米国人留学生、メイソン・ホロウィッツさん(20)が反戦を訴える手紙を書いた。広島を訪れて被爆女性(松原美代子)の声を聞いた体験を基に「(米国の)高校で原爆は学んだが、ここにはたくさんの現実の死があった」と記し、米国の新聞に投書の形で郵送した。大統領に読んでもらいたいと希望している。 

ホロウィッツさんは米国15大学の留学プログラムで今年9月に来日して文学部に在籍、日本語や仏教を学んでいる。先月14日、同大学内にある留学生センター主催のツアーで他の留学生約40人と広島を訪れ、原爆資料館へ。被爆者の女性から、被爆直後に市民がやけどで命を失っていった話などを聞いた。説明は英語で、女性のやけどの跡も見た。生々しい体験談に泣き崩れるメンバーもいた。ホロウィッツさんは「高校の歴史の授業で習ったよりもはるかに恐ろしい現実を知った。重い話だったが、とても、とても、感動した」と話し「聞いたことを無駄にしたくない」と大統領に手紙を書くことを決めた。

手紙では、広島を訪れた体験について「(話を聞いた被爆女性は)驚いたことに米国への敵意はなく、原爆投下を非難することはなかった。むしろ、現在のイラクでの米国の行動に憤りを表していた」と書き、「過去から学ばなければ、新たに過ちを犯す可能性が大きい。ぜひ広島で被爆者の証言に耳を傾けて」と呼び掛けた。

先月18日、出身地・シカゴの地元紙「シカゴ・トリビューン」に郵送したが、まだ掲載されていない。

ホロウィッツさんは「イラク戦争をはじめ、世界は今、パニック状態。原爆が再び使われることがないよう、米国人として大統領や多くの人に訴えたい」と話し、他の留学生にも米国内の新聞への投書を呼び掛けている。    (毎日新聞2005年11月16日付)       

ブッシュ大統領への手紙.

「核廃絶への新たな一歩」感じた

私は最初、英語で被爆体験談を米国の留学生にする今回の件は、交通事故で8カ月の入院生活のあとだったので、とても不安でした。しかし、「やることに意義がある」と決心して、お受けしました。

 驚いたのは、彼が私の被爆体験談を聴いた後、すぐにブッシュ大統領あてに公開手紙を書いたことでした。私は過去40年間たくさんの人々に被爆体験を話し、さまざまな反応を経験してきましたが、今回のような反応は初めてであり、私の核兵器廃絶の願いが届いたのかと思うと、とても感激しました。

それから1カ月もしないうちに、彼とその友達が再び広島を訪れました。感謝祭の集まりで、ホストファミリーの人たちと一緒に「世界の子どもたちが、サダコのような白血病で亡くならないように」と願いながら折った折り鶴を「原爆の子の像」に捧げました。

大統領が広島にいつ来るかは別問題として、この留学生の取った行動は核軍縮を願う私たちの目的に新たな一歩を踏み出してくれたと大変うれしく、感動させられました。このような行動が特に若者の間で世界中に広まるよう願っています。